eRDT
永久磁石式減衰装置―渦電流こま
eddy current Rotary Damping Tube
1. 構造と特徴
永久磁石式減衰装置『渦電流こまeRDT(eddy current Rotary Damping Tube)』は、産業機械用として普及している「ボールねじ」と大型車両の補助ブレーキとして広く普及している「永久磁石式リターダ」の減衰機構を組み合わせたダンパーです。
eRDTは、日本製鉄株式会社との共同開発製品です。
建物の層間変位などで生じた直線運動(軸運動)をボールねじによって速度を増幅した回転運動に変換、回転する永久磁石と固定された制動リング表面に相対速度差が生じることで、渦電流抵抗力が発生します。
この装置には以下の特長があります。
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従来の粘性ダンパーと同様に速度に応じて抵抗力が発生します。
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非常に小さな振幅から渦電流が発生し、抵抗力が作用します。
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粘性ダンパーと比較して温度依存性が小さいです。
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長周期地震動などのような長時間の繰り返し変形を受けても性能低下が小さいです。
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取り付けが容易で既存建物の耐震改修にも適します。
2.ダンパーの基本原理
eRDT は、主にボールねじ軸、ボールナット、永久磁石(ネオジム磁石)、磁極リング、制動リング、フランジで構成されています。永久磁石は、磁極リングの外周面に沿って隣り合う磁極が異極となるように複数取り付けられており、磁極回路が構成されています。
渦電流抵抗力の発生原理には、フレミングの法則(図右)を利用しています。下図に示すように金属製の円盤に対して、N 極からS 極に向かって磁界が発生するように永久磁石を配置します。
この円盤に回転(速度)を与えますと、右手の法則により起電力が発生します発生した起電力と元の磁界は、左手の法則によりローレンツ力が発生します。
このローレンツ力は回転を妨げる方向に発生しますので、これが減衰力として作用します。
3. 基本特性
eRDTの抵抗力は、
・渦電流による抵抗力
・機械部品の摩擦力
・回転運動による慣性力
を足し合わせたものになります。
抵抗力 F = λ(Qv + Qi + Qf )
λ:ねじ効率
Qv:渦電流抵抗力
Qi:回転慣性力
Qf:機械摩擦力