よくある質問
免震構造は普通の建物とどこが違うのですか?
普通の建物は地面に直接固定されていますが、免震建物は「免震装置」というクッションの上に乗っています。
免震装置は床下にあり、1階の床が地面から切り離されています(1階の柱の上等に免震装置を設置する場合もあります)。外見上一般の建物とほとんど見分けがつきません。建物が水平方向に動くための空間が地下に設けられ、設備配管類は全て建物の動きに追従できる可動構造になっています。
免震の効果はどの程度あるのですか?
免震建物の揺れは、大地震時に普通の建物の4分の1から5分の1程度になります。一般的な建物は、大地震で倒壊を免れても壁が崩れたり家具が倒れるなどの被害が発生しますが、免震構造は建物の「揺れ」そのものを小さくしますのでこのような被害を最小限に留めることができます。
免震構造は弱い地震でも効果があるのですか?
ごく弱い地震では免震効果を明確に体感することはできません。免震構造は一般的に震度3以上の地震で免震効果が出るように設計されています。弱い地震でも効くようにすると風などで揺れる建物になってしまいます。
縦揺れに対しても効果があるのですか?
地震の揺れの強さは水平方向が上下方向より遥かに大きいため、免震建物はごく特殊な場合を除き、横揺れを低減するように設計します。
免震装置は建物の重量を支えながら水平方向に動き、地震の揺れが建物に伝わるのを防ぎます。このため装置は水平方向は軟らかく、上下方向には硬く造られています。免震装置が上下方向に軟らかいと地震時に建物がシーソーのように動き(ロッキング振動)、揺れがさらに大きくなる恐れがあります。
免震装置とはどんなものですか?
免震構造が成立するには以下の4つの機能が必要で、そのための装置が免震装置です。
1 建物の重量を支え、水平方向に自由に動く「支承(アイソレータ)」機能
2 水平移動した建物を元の位置に戻す「復元」機能
3 地震のエネルギーを吸収して揺れを止める「減衰(ダンパー)」機能
4 風など、一定以下の外力では作動しない「制限(トリガー)」機能
免震装置として広く使われているのは「積層ゴム」で、これに鉛の心棒を入れてダンパー機能を持たせたものが「鉛プラグ入り積層ゴム」です。地震時に「積層ゴム」が変形して地震の揺れが建物に伝わるのを防ぎ、心棒の「鉛プラグ」が地震のエネルギーを吸収して揺れを止めます。
免震装置はこの他に「転がり支承」、「すべり支承」などがあり、目的や設計条件に応じて使い分けます。
ダンパーには、鉛や鋼棒などを使用した弾塑性ダンパー、粘性減衰装置、オイルダンパー、などがあり、それぞれの特性を生かして使用します。
免震装置のゴムの耐久性は大丈夫ですか?
ゴムは空気(酸素)と日光(紫外線)により劣化しますが、免震装置のゴムは外部被覆材でこれらから遮断されおり、60年以上の耐久性が実証されています。また免震装置は防火区画された地下にあり、火災に遭遇することはありません。免震装置の設置場所を駐車場等に利用する場合は、装置の耐火被覆が義務づけられています。
さらに、装置の状態を確認するために定期点検を行うほか、大地震や火災、台風等による浸水が発生した場合は臨時の点検を行います。
ビルでない普通の住宅を免震にできますか?
「転がり支承」や「すべり支承」を利用すれば戸建住宅など軽量な建物の免震化が可能です。積層ゴムを使用した免震構造は、支える建物がある程度重くないと十分な効果を発揮しないため、住宅のような軽量建物を免震化できません。
なぜ全ての建物が免震にならないのですか?
免震構造にすると、免震装置設置に関わる費用や時間が加算されます。また、建物が水平方向に動く余地が必要となるなど、建築計画上の制約もあります。建物は「免震」もしくは「制震」など、「地震の揺れによる害を免れる構造」であることが好ましいのは言うまでもありませんが、全ての建物が出来るわけではありません。
すでにある建物を免震にできますか?
既存建物を免震構造にする「レトロフィット」という技術があります。建物の基礎下や柱を切断して免震装置を入れるもので、歴史的建物や外部の意匠を損ねずに保存したい建物などで使用されます。設備配管の可動構造化などを含めた大掛かりな工事になります。
建物を使用しながら免震化した例として、東京では「国立西洋美術館」「豊島区役所」などがあります。